2025年5月19日|赤字経営の「本質」と、問い直しの力
行政書士の岩上です。
経営管理ビザの現場では、毎年のように「赤字でもビザ更新できるのか?」という相談が寄せられます。
企業経営に“赤字”はつきものです。特にスタートアップや成長期の企業では、
挑戦・投資・社会変化への対応を優先した結果、一時的な赤字に陥ることは決して珍しくありません。
しかし、日本のビザ制度、とくに経営管理ビザの更新審査においては「赤字」がしばしば致命的な“壁”として立ちはだかります。
そもそも、なぜ赤字はこれほどまでに経営者や現場に「不安」や「罪悪感」をもたらすのでしょうか。
それは、“赤字=失敗”という思い込みが、
法制度・世間の常識・金融機関の審査基準など、あらゆるところに根強く刷り込まれているからです。
ところが、実際に経営現場で多くの赤字企業の相談を受けてきた身からすると、
「赤字=即ダメ」という短絡的な評価では、本当のリスクもチャンスも見逃してしまうのです。
たとえば、ビザ更新のために「とにかく今期は黒字にしよう」と本業を犠牲にして一時的な利益を作る経営者がいます。場合によっては、会計上の黒字化を達成するためにグレーな行為に走ってしまう経営者もゼロではありません。
けれど、その裏で本来やりたかった挑戦や、新規事業、社員の育成を諦めてしまうことが本当に正しい選択なのでしょうか。
書類を整えれば審査は通るかもしれません。
しかし、5年後、10年後に「本当にこの選択が正しかった」と自信を持てる経営者は、どれだけいるのでしょうか。
私が現場で見てきた“強い経営者”には、ある共通点があります。
それは「赤字」を単なる“恐怖”や“失敗の烙印”として受け止めず、
「今の赤字は何を問いかけているのか?」「この経験がどんな新しい行動や学びにつながるのか?」と
問い直す習慣を持っていることです。
先日もあるクライアント企業の社長が、赤字の状況で私にこう語りました。
「経営管理ビザの更新が不安です。でも、せっかくならこの機会に“本当にやりたかったこと”にもう一度チャレンジします。」
結果的に、その社長は新しいサービスの立ち上げとチーム改革を断行し、翌年にはV字回復を実現。
ビザも無事更新され、社員からも「社長が前より元気になった」と言われていました。
法制度や行政の論理を守りながらも、「一人ひとりの経営者が自分の問いに立ち戻る」ことこそ、
本当の経営支援、そして社会を良くする原動力だと私は思っています。
「赤字」という“壁”が現れたとき、
「この壁は、私たちにどんな問いを投げかけているのだろう?」と自分自身に問い直すこと。
その一歩が、次の“未来”につながっていくのではないでしょうか。
本コラムを読んでくださった経営者や起業家の皆さま。
もし今、赤字や壁に悩んでいる方がいれば、「自分の問い」に正直に向き合ってみてください。
不安や迷いを遠慮なく言葉にしてみてください。
そして、困難な時こそ「本当にやりたいこと」や「未来の自分の姿」を問い直してみてください。
私たち行政書士は、数字や制度を超えて「問い」の伴走者として、皆さまの挑戦と成長を全力で応援しています。
最後に――。
「赤字」や「ビザ更新の危機」は、“終わり”ではなく“新しい問いのはじまり”です。
その壁の向こうに、きっと新しい景色が広がっています。
どうか一緒に、その未来を創っていきましょう。
また次回のコラムで、お会いできるのを楽しみにしています。