“価格”を上げられる会社と、下げるしかない会社の違い
こんにちは、ラプロユアコンサルティング事務所 代表の岩上です。
「もう少し値上げしたい。でも、うちの会社で通用するんだろうか?」
経営者として一度は、いや何度も自問するテーマではないでしょうか。
ニュースを見れば物価高、同業他社も「今年は値上げです」と通知している。
けれど、自社が同じことをやると、古参の取引先から「そんなに高くなるなら他に頼む」と肩透かしを食らう。 この“値上げ”と“値下げ”の恐怖、どちらにも振り回された経験のある経営者は少なくないはずです。
ただ、面白いのは―― まったく同じ業界、同じ規模、同じエリアでも、“堂々と値上げしても顧客が減らない会社”と、“値下げ競争に追い込まれ消耗し続ける会社”が、現実に混在していることです。
「うちは何が違う?」「どうすれば“価格”で主導権を握れる?」 今日のコラムは、この“当たり前”にみえる価格競争の裏にある、「前例破りの真実」に斬り込みます。
値段という数字を超え、“自社の物語”“顧客の体験”“経営者の覚悟”をめぐる、 ちょっとぶっ飛んだ話――お付き合いください。
経営者として一度は、いや何度も自問するテーマではないでしょうか。
ニュースを見れば物価高、同業他社も「今年は値上げです」と通知している。
けれど、自社が同じことをやると、古参の取引先から「そんなに高くなるなら他に頼む」と肩透かしを食らう。 この“値上げ”と“値下げ”の恐怖、どちらにも振り回された経験のある経営者は少なくないはずです。
ただ、面白いのは―― まったく同じ業界、同じ規模、同じエリアでも、“堂々と値上げしても顧客が減らない会社”と、“値下げ競争に追い込まれ消耗し続ける会社”が、現実に混在していることです。
「うちは何が違う?」「どうすれば“価格”で主導権を握れる?」 今日のコラムは、この“当たり前”にみえる価格競争の裏にある、「前例破りの真実」に斬り込みます。
値段という数字を超え、“自社の物語”“顧客の体験”“経営者の覚悟”をめぐる、 ちょっとぶっ飛んだ話――お付き合いください。
「値上げできる会社」と「値下げに追われる会社」の初期症状
価格設定でまず現れるのは、「覚悟の濃度」の違いです。値上げに成功する会社は、相場や競合の動きよりも“自分たちの価値を信じる温度”が圧倒的に高い。
たとえば、昔、私が相談を受けた板金工場の話。 10年近く値上げせず、「ウチなんて小さいから」と言い訳ばかりしていたそうです。
ある日、工場長が「もう限界です。人件費も材料費も上がっているのに…」と、珍しく声を荒げた。
ついに意を決して、メイン取引先に値上げを打診したら、「じゃあ他に頼みます」と即答された――。
ほとんどの経営者なら「ほら見ろ、やっぱり値上げなんて無理だった」と諦めたでしょう。
でも、その工場長はここで諦めなかった。
彼は取引先の担当者に「なぜ、これまでウチに頼み続けてくれていたのか」を徹底的に聞き取り、現場の職人たちにも「どんな工夫や裏ワザで納期や品質を守ってきたか」をヒアリングし直した。
そこで分かったのは「図面にない“直し”や“フォロー”を現場が毎回無償でやっていた」「クレーム案件ほど追加請求せず徹夜で対応していた」など、 顧客の担当者も“言葉にできなかった信頼”が山ほど積み重なっていたこと。
ここで工場長は、自分たちの“本当の価値”と“見えない仕事”を顧客にきちんと説明し直したのです。 その結果、取引先の上層部から「実は他の業者で同じ品質は無理だと分かった。今の価格で続けてくれ」と逆オファーが返ってくるという、驚きの結末を迎えたのでした。
値上げは“現場へのヒアリング”から始まる
値上げ交渉がうまくいく会社は、経営者や営業だけでなく、
現場・スタッフ・顧客の“生の声”を徹底的に言語化しています。
「本当に選ばれる理由」は、意外なほど日々の細部に隠れているものです。
値上げ交渉がうまくいく会社は、経営者や営業だけでなく、
現場・スタッフ・顧客の“生の声”を徹底的に言語化しています。
「本当に選ばれる理由」は、意外なほど日々の細部に隠れているものです。
一方、値下げばかりの会社には“自己卑下”や“空気の重さ”が漂っています。
「うちは安くないと選ばれない」「もう少し我慢して値段を抑えよう」――こうした空気は現場に伝染し、 気づけば「価格しか語れない会社」になってしまう。
価格の“覚悟”が会社の文化を決め、文化が「値上げできるか/できないか」の運命線を引いてしまうのです。
「なぜ値上げできるのか?」――顧客が本当に選んでいるもの
価格を上げられる会社は、そもそも「値段」の話になる前に“選ばれて”います。顧客は「安いから」ではなく、「この会社と付き合うと気持ちがいい」「何か困った時に一番最初に相談できる」「裏切られたことがない」――そんな“信頼の履歴”で選んでいるのです。
たとえば、ある住宅リフォーム会社のエピソード。
10年以上価格据え置きで続けてきたのを思い切って値上げしたら、数人のリピーターから「高すぎる」と一時離脱されてしまった。でも、半年後にそのお客様が再び戻ってきて、「やっぱりあなたのところじゃないと不安で」と言われたそうです。
価格競争の荒波のなか、「高くてもまた頼みたい」と思わせるのは“工事の正確さ”や“丁寧な説明”といった“人間味の積み重ね”です。
また、関西のとある和菓子店の話です。
周辺の店は原材料高騰のたびに「仕方なく」値上げしているのに、その店だけは値上げ後も客足が減らず、逆に口コミやSNSで“応援の声”が増えたそうです。
秘訣を聞くと、「毎朝店頭に立って“今日はこの餡が一番自信作”とお客様に語りかけている」「失敗作や日常の失敗もSNSで公開している」とのこと。
「価格=人間関係の質」。
顧客は「安さ」より「関係の“面白さ・信頼・安心”」にお金を払っているのです。
価格を上げるための「根拠」は、競合や相場の数字だけではありません。
「うちの会社は、この人たちのために、今日も全力でやっている」――この現場の想いと物語を“伝え直す”ことが、最大の値上げ戦略なのです。
※参考:DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー「消費者の共感をどう生み出すか」
「値下げ圧力社会」の罠――なぜ皆“自信”を失うのか
なぜこんなにも「値下げ圧力」が強まってしまったのか――。その理由を私は現場で何度も見てきました。
ある日のランチ会で、異業種の経営者数人と「最近の値上げ・値下げ合戦」について語り合ったことがあります。 飲食店、製造業、小売り、士業、どの社長も「結局最後は価格勝負になる」と嘆いていた。 でも、そのなかで一人だけ「自信があるから値下げには応じない」という飲食店経営者がいました。
彼の店は、周辺のランチが軒並みワンコインになった時でも「うちはあえて1000円にする」と宣言。 当然、最初は客足が減ったが、「うちの味・空間・人に価値を感じてくれるお客様だけでやっていく」と腹を括った。
すると半年後には逆に「値段の理由を話す会話」がスタッフとお客様の間で増え、 「なぜその値段なのか?」を“語れる現場”ができていたのです。 他店が疲弊しきったタイミングで、その店だけが連日満席に戻った――これぞ“値段を語る勇気”が現場を救った象徴です。
社会が「安さ」ばかりに価値を置くと、会社も人も“自信”と“ストーリー”を失いがちです。 でも、「なぜこの値段なのか」を経営者・スタッフ・現場みんなで語り直せば、 必ず“価値の再発火点”が見えてくる。
「値下げ圧力」に飲まれないための唯一の方法
価格競争に巻き込まれそうな時ほど、
「誰のどんな物語を守りたいのか?」を現場で問い直してみてください。
その問いが、値下げ社会で唯一の羅針盤になります。
価格競争に巻き込まれそうな時ほど、
「誰のどんな物語を守りたいのか?」を現場で問い直してみてください。
その問いが、値下げ社会で唯一の羅針盤になります。
※参考:Forbes JAPAN「値上げしても絶好調。ヒット連発を生む「おもろい」社風」
「価格=ストーリー」時代へ──“選ばれる会社”になる条件
今、多くの会社が「価格をどう設定するか」で悩んでいます。でも、本当に勝てる会社は、「価格の理由」を“物語”として語れる会社です。たとえば、ある老舗旅館がSNSで「なぜこの価格なのか?」を赤裸々に発信し始めたことがあります。 「うちは他より高い。でも、お客様一人ひとりの要望を聞くために、スタッフを平均より多く配置しています」「季節ごとに布団や料理を全て変えています」「近隣農家さんから直接仕入れているから、仕入れ値も高い」――
こうした“裏側の物語”を丁寧に発信した結果、最初は「高い」という声があったものの、「ここでしか体験できない安心やぬくもり」が口コミで広がり、むしろ値上げ後の方がリピーターが増えたのです。
また、BtoBサービスでも同じ。 ITシステム開発会社で「なぜこの開発費なのか?」を徹底的に“見える化”したら、
「うちのエンジニアは顧客の現場で“寝食を共にして”現場の声を吸い上げる」
「開発後も1年間、毎月改善提案を必ず続けている」
そんな“見えない価値”を、社内でも顧客にも語り直したことで、「他社より高くてもお願いしたい」と指名案件が倍増したそうです。
このように、値段とは「何をどこまで物語れるか」の勝負です。
「選ばれる会社」は、値札の裏にスタッフや顧客とのエピソード、現場のドラマ、経営者自身の覚悟を 毎日少しずつ上塗りしています。
「安さ」で勝てるのは最初だけ。 「物語」が語れる会社こそが、値上げにも耐え、価格競争の外側で“選ばれ続ける”のだと、私は確信しています。
FAQ:よくある「価格」への誤解と現場のヒント
Q:値上げすると必ず顧客が離れるのでは?
A:一部は離れるが、「あなたの価値」を本当に理解する顧客は必ず残ります。
その時初めて“本当のファン”が見える。
Q:うちの会社は値上げに自信がありません…
A:自信は「自分たちの仕事の意味を語れること」から生まれます。
値段の理由を、顧客やスタッフと一緒に語り直すことが第一歩。
Q:安さだけが強みの業界でどう差別化する?
A:「安い」以外のストーリーを育てる努力を止めない。
現場のエピソードや顧客との対話を積み重ねることが大切です。
A:一部は離れるが、「あなたの価値」を本当に理解する顧客は必ず残ります。
その時初めて“本当のファン”が見える。
Q:うちの会社は値上げに自信がありません…
A:自信は「自分たちの仕事の意味を語れること」から生まれます。
値段の理由を、顧客やスタッフと一緒に語り直すことが第一歩。
Q:安さだけが強みの業界でどう差別化する?
A:「安い」以外のストーリーを育てる努力を止めない。
現場のエピソードや顧客との対話を積み重ねることが大切です。
【この記事の3行まとめ】
📌 この記事の 3 行まとめ
・「価格=ストーリー」の時代へ。
・値上げは“自社をどう扱うか”の覚悟から始まる。
・顧客の“物語”と現場の熱量が、唯一の差別化になる。
【おまけエピソード】
「老舗和菓子店が値上げ発表後、最初はクレームと離脱が続出。しかし“なぜその値段なのか”を動画で毎日語ったところ、半年で売上が3割アップ。むしろ“高くて応援したい”という全国からの贈答注文が殺到し、創業以来最高益を記録した。値上げが“離脱の危機”どころか、“ブランド飛躍のきっかけ”になった現場もある。」
どんな時代も、値札の裏には“物語”と“覚悟”が宿っています。
価格を上げられる会社には、必ず“誇り”と“語れる現場”がある。
あなたの会社の「値段」は、どんな物語を持っていますか?
明日からまた、現場で“自分たちの価値”を語り続けていきましょう。
「価格は相場で決まるもの」ではなく、「自社が生み出してきた物語、誇り、現場のリアルで決まるもの」。
値下げ社会に押し流されそうな時こそ、自分たちのストーリーを掘り下げることが、
次の競争力を生み出す最大の武器です。
このコラムが、あなた自身や現場の“物語”を語り直す小さなきっかけになれば嬉しいです。
今日もあなたの会社の“物語”に、誇りを添えて。