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“AI任せで責任は誰が取るのか?”経営者の判断が問われる新時代

“AI任せで責任は誰が取るのか?”経営者の判断が問われる新時代

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国際行政書士 岩上真也
AI時代の組織設計コンサルティング / 経営思考の伴走者

経営者が抱える「言葉にならない違和感」を、問いとして言語化。 AIを思考の拡張とし、組織の「空気」と「構造」を再設計することで、事業の本質的な成長と、社員が「ここにいていい」と感じられる未来を共創します。 外資系企業の設立・ビザサポートから、会計・経営・AI戦略まで幅広く支援。

Table of Contents
“AI任せで責任は誰が取るのか?”──経営者の判断が問われる新時代

“AI任せで責任は誰が取るのか?”経営者の判断が問われる新時代


こんにちは。ラプロユアコンサルティング行政書士事務所 代表の岩上です。


「これ、AIが出した内容なんで……」
ある日、新人がChatGPTで作った資料をそのまま提出してきました。


確かに内容はよくできていました。でも、なぜこの構成にしたのかと尋ねると、「分かりません」と答えるだけ。
“判断した主体”が見えない資料は、たとえ正しくても不安を感じさせます。


その瞬間、私の中にあったモヤモヤが明確になりました。
これは新人の問題ではなく、AIの活用と「判断責任の構造」を曖昧にした組織設計そのものの問題なのだと。


経済産業省の調査によれば、AIを導入した企業の約68.4%が「判断責任の所在が不明瞭になった経験がある」と答えています[1]


AIが判断を助ける時代。
では、その“判断の結果”には、誰が責任を持つべきなのでしょうか?


このコラムでは、AI導入が進む今だからこそ、
“任せてよい判断”と“任せてはいけない判断”の境界線を、私自身の経験も交えて再定義します。


そして最終的に問いたいのは、こうです。
「経営者の役割とは、“判断すること”なのか、“責任を引き受けること”なのか?」


AI任せで失われる“判断の所在”

判断の空白を描いた図解

「AIが出したので……」という言い訳の蔓延

「これはAIが作ったので……」という一言を聞いたことはありますか?
最近では、報告書や提案資料の冒頭にこうした“免責のような前置き”がつく場面が増えています。


一見、丁寧な確認のようにも思えますが、
その実、「自分で判断していない」という姿勢の表れとも受け取れます。


米国AI責任設計研究会の調査では、生成AIを使った業務判断において「責任者が不明だった」とするケースが57%に達したと報告されています[2]


つまり、判断の主体があいまいになることで、結果の質だけでなく、組織の“責任設計”そのものが揺らいでいるのです。


誰が判断し、誰が責任を取るのか?

ある顧問先では、契約書レビューをChatGPTに任せた若手社員が「完了しました」と上司に報告していました。


しかし、その後AIが“旧版の契約条文”を出力していたことが判明。
結果的に軽微なミスで済みましたが、発覚時に誰も「自分の判断だった」と言えなかったことが、むしろ深刻でした。


このような状態は、経営学でいう「責任の空白(Responsibility Gap)」に該当します。
これは、自律型システム導入時に発生しやすい“倫理的空白”の一種であり、欧米の公共機関でも議論が進んでいます。


私自身が抱えた“言い訳する部下”の違和感

以前、私のもとで働いていた若手スタッフが、ChatGPTで業務報告書の下書きを作成しました。


内容は整っていましたが、どこにも彼の視点が感じられず、
「どこが自分の判断?」と聞くと、「ほぼAIです」と返ってきました。


私はそのとき、「このままでは“判断できる人”が育たない」と直感しました。


報告書が正しいかどうかではないのです。
「なぜこの構成にしたのか?」「この文言で本当に伝わるか?」
そうした問いに自分の言葉で答えられることこそが、責任の第一歩なのです。


任せる判断・任せてはいけない判断

任せられる判断と任せられない判断の境界図

再現性の高い判断はAIに委ねていい

AIに判断を委ねられる領域は、確かに存在します。
それは、ルール化・再現可能・誤差許容がある判断です。


例を挙げれば:

  • 請求書の不備チェック
  • 定型文の文章修正
  • 契約書の条項比較とテンプレート挿入

これらは「思考の自動化=System 1」で十分対応可能なタスクです。
ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンが定義したように、
反復性があり、判断基準が明示されているものは、人間よりAIの方がむしろ向いています。


「違和感を拾う判断」は人間の領域

一方、営業判断、採用選考、コンセプト設計など、「正解がない」「文脈依存が高い」領域は、人間にしか担えません。


これは“System 2”型──直感ではなく、熟慮・相手の感情の読み取り・複雑な文脈理解が求められる思考領域です。


たとえば、AIが作った資料を読んで「よくできているけど、なぜか違和感がある」。
この“微差”に気づく感性が、AIにはまだ宿っていません。


経営の中で「違和感」は極めて大きなヒントです。
それは、市場の変化、人の反応、文脈のズレを察知する“経営者のセンサー”のようなものだからです。


「全部任せて楽になったけど、怖くなった」ある相談者の実話

ある40代の経営者の方から、こんな相談を受けました。


「ChatGPTに全部やらせたら、最初は楽で…でもだんだん“自分が何を決めているのか分からなくなった”んです。」


この言葉は、私にとっても他人事ではありませんでした。


経営とは「何を決めないかを決める」ことでもあります。


AIを活用していく中で、自分がどの判断を捨て、どの判断だけは人として担うのか。
その線引きを曖昧にしていたことが、彼に“責任の不安”として返ってきたのだと思います。


任せる判断・任せない判断を分ける3つの基準

✔ 明確な基準・ルールがあるか?(Yes→AI任せ)
✔ 判断結果に感情・関係性・文脈が絡むか?(Yes→人間)
✔ その判断で組織の信頼はどう変わるか?(大→人が責任を取る)

“AIがやった”では済まない時代にどう備えるか

判断責任とAIの補助線

「もし失敗したら誰が謝るのか?」という問い

この問いは、すべての経営者が避けては通れません。


「これはAIが出力した内容です」と説明すれば済む時代は、終わりつつあります。


EUが2023年に策定した「AI Act」では、“高リスクAI”の判断に対し、人間の監督責任を明記することが義務づけられています[3]


これは、法律だけの話ではありません。
顧客や取引先は、判断の責任者を“人”に求めているのです。


説明責任とは、謝る人を決めることではありません。
「なぜその判断をしたのか?」を語れる構造を作ることなのです。


法務・契約上の“判断責任”の基本構造

私がアドバイスしている企業の一つでは、AI出力物の扱いについて明文化しています。


  • 提案書:ChatGPT生成時は「編集者名」を明記
  • 契約ドラフト:AIレビュー済みかどうかのチェックリストを添付
  • 社外送信文書:AI出力後に「責任者印」を押すルール

こうした運用は、単に“誰がやったか”を記録するだけでなく、
「誰が考え、誰が引き受けるのか?」という意識をチームに浸透させます


つまり、判断の可視化=ガバナンス設計の要なのです。


「判断を設計する」ことが経営の中核になる

私は、判断には常に3つのドメインがあると考えています:


  • ① 作成責任:誰が生成・検討したのか
  • ② 承認責任:誰が最終的に通したのか
  • ③ 説明責任:誰が語れる・守れるのか

この3つを分けて設計するだけで、「誰の判断だったか」が明確になります。


実際に、あるIT企業ではこの三分割モデルを取り入れ、
判断の属人化を防ぎつつ、AI活用の成果が前年比+27%に向上した事例もあります[4]


判断設計3ドメイン

✔ 作成(AIでもOK)
✔ 承認(人間が行う)
✔ 説明(顧客や社外に対応できる人)

この3つを明示すれば、“AIがやった”では済まされない現場でも、混乱がなくなります。

AI時代の“責任設計”──経営者がやるべき3つのこと

責任構造マトリクス

①「判断する人」と「判断を見届ける人」を明確化する

AIが判断の一部を担う時代において、「誰が実質的な責任者か?」を明示する仕組みは不可欠です。


私は顧問先で、判断プロセスを以下のようなマトリクスで区分しています:


  • 【実行判断】:AI・若手社員(例:資料初稿・修正案)
  • 【承認判断】:管理職(例:提出判断・リスクチェック)
  • 【説明責任】:経営層(例:対顧客説明・最終責任)

この構造は、組織論で言う「スチュワードシップ理論(Stewardship Theory)」──
「信託された権限には説明の責任が伴う」という考えに基づいています。


判断の構造を見える化することで、「責任の移譲」ではなく「責任の共有」が可能になります。


②「AIに任せてよい範囲」をガイドライン化する

PwCの調査によると、AIを導入している企業のうち、具体的な使用ガイドラインを整備しているのはわずか32%にとどまっています[5]


「気づいたらAIに丸投げしていた」では遅いのです。


私は以下のような方針を提案しています:


  • AI初稿OK:社内資料、非公開レビュー用メモ
  • AI使用禁止:契約条項の原案、顧客向け最終報告
  • AI支援あり:提案書構成、マーケ文章の下書き

「どの判断を誰がするか」だけでなく、「どの判断をAIに委ねるか」も組織のルールになる時代です。


③「判断の質」を問う文化が組織を強くする

最後に、私が一番大切にしている視点です。


判断ミスを叱るのではなく、「なぜその判断だったのか」を語れる環境を作ること。


判断が間違っていた場合、それは学びです。
でも「なぜそう考えたのか」が共有されないと、組織に知見は残りません。


ある会社では、週1回の“判断レビュー会議”を実施し、
「その判断の理由・揺らぎ・代案」を3分で発表する文化を作りました。


結果、社員間で“判断基準”が自然に共有されるようになり、
責任回避よりも「思考を説明できる人」が評価される仕組みが根づいたのです。


AI時代の責任設計:3つの実践フレーム

✔ 判断ドメインを3層に分けて“属人化”を防ぐ
✔ AI使用の可否を「領域別・工程別」に明文化
✔ ミスを共有資産に変える“判断ログ文化”を育てる

まとめ〜「AI任せ」の境界線を引くのは、経営者自身である

この記事の3行まとめ
  • AI導入で判断と責任の境界が曖昧になりつつある
  • 任せてよい判断・ダメな判断の再設計が必須である
  • 最終責任を担える構造を“経営者の手”で設計すべきである

AIは、素晴らしい判断補助ツールです。


ですが、それはあくまで「ツール」であり、「判断者」ではありません


私自身も、ChatGPTに頼った提案がそのまま通り、何も考えなかったことがあります。
でもそのあとで顧客から「これは、誰が本当に考えたのですか?」と問われた瞬間、背筋が伸びました。


この出来事は、私に「AIを活かすとは、責任を引き受けることだ」と教えてくれました。


今、私たちは「判断のスピード」だけでなく、
「判断の質と責任の設計力」こそが、経営力の差になる時代に入っています。


このコラムが、あなたの次の判断設計・組織設計のヒントになれば幸いです。


AIは答えを出してくれる。でも、その答えを引き受けるのは、あなたです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
「任せる」とは、「背負う」ことでもあります。どうぞ、判断の構造から見直してみてください。

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