“あの人はどんどん成長していくのに”──自分だけ止まっている気がするあなたへ
こんにちは、ラプロユアコンサルティング行政書士事務所 代表の岩上です。
「どうして、あの人ばかりが進んでいくのだろう」──そんなふうに感じたことはありませんか?
学生時代、一緒に走っていたはずのトラックレース。いつの間にか、あの人はコーナーを曲がって見えなくなり、自分は同じ位置で足踏みしているような気がしてしまう。
昇進、転職、副業の成功、起業──周囲の“成果”だけが鮮やかに映る時代。SNSのタイムラインは、誰かのハイライトで埋め尽くされ、自分だけが「変わっていない」「成長できていない」と取り残される感覚。
でも、本当にそうでしょうか?
スティーブ・ジョブズは、かつてこんな言葉を残しました。
“You can’t connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards.”
「点と点は、未来を見て繋ぐことはできない。振り返って初めて繋がるのだ」と。
成長とは、誰かに追いつくことでも、目に見える成果を積み上げることでもありません。
自分が問い続けてきた時間、立ち止まった夜、悩んだ過程──それらすべてが“点”であり、後になって線になる。
実際、World Economic Forumのマイケル・シモンズは、「人間の成長は“指数関数的”であり、初期段階は変化が見えにくいが、一定ラインを超えると一気に加速する」と語っています。つまり、“変わらない時期”は停滞ではなく、助走なのです。
このコラムでは、「成長できていない気がする自分」とどう向き合えばよいのか、
そして“誰にも気づかれない静かな成長”を、どう見つけていけるのか──その視点を、問いかけながら探っていきます。
あなたは今、何に問いかけられているのでしょうか?
自分だけが置いていかれる不安が強い時は、コラム「「迷い」から始まる経営の革新」のように、迷い自体を次の問いに変えていく視点に触れてみると、安心できるかもしれません。
止まった時計を、隣の誰かが追い越していく

誰かのSNSを眺めていたとき、不意に心がざわつく瞬間がありませんか?
「同期が部長に昇進しました」──そんな投稿を目にしただけで、胸の奥が静かに軋むような感覚。
それまで平気だったのに、突然“自分の時間”が止まって見えてしまう。
周囲の投稿が早送りのように流れていく中で、自分だけが映写機のフィルムを巻き戻してしまったような、そんな錯覚。
なぜ、あの人はどんどん先へ進むのに、自分は“ここ”にいるままなのか。
そして、いつしか「どうして自分は変われないんだろう?」という疑問が、自責にすり替わってしまう──
それは“成長”という言葉が、いつからか「誰かとの比較」でしか測れなくなっていたからかもしれません。
Indeed Japanの調査によれば、20〜30代の社会人のうち65%が「SNS上のキャリア投稿に対して焦燥や劣等感を覚える」と回答しています[1]。
情報を得る手段だったはずのSNSが、いつしか“自分との比較デバイス”になってしまう。
でも、冷静に考えてみてください。
誰かの“今”と、自分の“過去・未来”を同じレーンで比べてしまうことに、意味はあるでしょうか?
ウォルト・ディズニーは言いました。
“We keep moving forward, opening new doors, and doing new things.”
「前に進み続けること、それだけが大事なんだ」と。
大切なのは、時計の針が“今、動いているか”であって、“どこまで進んだか”ではないのかもしれません。
- ✔ 他人の進捗は、あなたの価値と無関係です
- ✔ 今のあなたが何を「見つめようとしているか」に注目してみましょう
- ✔ 「焦ってしまう自分」を否定せず、問いとして受け止めてみてください
……比較してしまうことは、悪いことでしょうか?
それとも、それだけ“成長したい”という気持ちが、まだ心の中に残っているという証拠でしょうか。
「努力してるのに変われない」──その焦燥の正体

誰よりも努力しているつもりなのに、報われない。
人の倍、準備している。言われたこともやっている。休日も学んでいる。
──なのに、自分だけ何も変わっていないように見える。
そう思ってしまう理由は、“結果”ばかりを見ているからではありません。
もっと深いところで、「自分がちゃんと生きているのかどうか」という実感に触れられていないからです。
誰にも言えないけれど、ふと涙が出た夜がありました。
なぜ泣いたのか分からない。何も失っていないのに、胸の奥が締めつけられる。
──その痛みは、“問い”の裏返しだったのかもしれません。
「これでいいのか?」「このまま終わるのか?」と、自分に問いかけてしまう。
それこそが、何かを変えたいという意志の痕跡。
Google社のリスキリング調査によれば、自己成長に取り組んでいる人の74%が「自分の努力を肯定できない」と感じているそうです[2]。
つまり、努力している人ほど、自分を責めてしまうのです。
なぜなら、彼らは“もっと良くなりたい”という願いを、常に問いとして抱えているから。
哲学者エリック・ホッファはこう言いました:
“学ぶ者は、未来を受け継ぐ。学びを止めた者は、過去に生きる。”
学ぶということは、問い続けるということ。
問い続けるということは、「今の自分に満足していない」ということ。
それはつまり、“努力の最中”にあるという証ではないでしょうか。
では、どうすれば“変われない”という感覚から抜け出せるのでしょう?
それは、問いを持っている自分を「不完全」と見なすのではなく、「動こうとしている構造」そのものとして捉え直すことです。
努力の証明とは、行動の履歴ではなく、揺らぎの記憶です。
完璧だった日の記録よりも、「何をしても足りないと感じていた日々」の方が、成長の厚みを残していく。
だから今、もしあなたが「このままでいいのか」と迷っているなら、
それはあなたの中で“未来が始まっている証”なのです。
- ✔ 毎日の「迷いログ」を書いてみる(何に悩んだ?何を恐れた?)
- ✔ 問いの質が変化していれば、それは“目に見えない成長”の証
- ✔ 「止まっている感覚」は、“進みたがっている証拠”として捉えてみる
もしかしたら──
努力しても変われないのではなく、
変わってきたからこそ、もう「昨日の自分」では満足できなくなったのかもしれません。
あなたが気づかない“静かな成長”のかたち

──「なんだ、何も変わっていないじゃないか」
鏡を見て、過去の自分と変わらない表情に気づくとき。
あるいは、書いたノートを見返しても、半年前と同じ悩みが並んでいる気がするとき。
私たちは、そんな瞬間に「自分は何も成長していない」と決めつけてしまう傾向があります。
けれど、それは本当に「成長していない」という事実でしょうか?
成長とは、他人に評価されて初めて現れるものではなく、誰にも見られずとも進行している“現象”です。
心理学者キャロル・ドゥエックの「成長マインドセット」理論によれば、人は自分が「成長している」と感じられないときに限って、最も深く変容している可能性が高いとされています[3]。
なぜなら、自分の内側が「過去の自分では満足できなくなった」状態こそが、成長の兆しだから。
成長は、問いの温度で分かります。
1年前には考えなかったことを、今は当たり前に疑問に思っている。
あるいは、「なぜそれが気になるのか分からないけれど、ずっと心に引っかかっている」──そんな違和感の形で現れることもあります。
光の当たらない地面の下で、じわじわと根を伸ばしていた小さな芽は、ある日突然“花開いたように”見えます。
けれど実際には、その日までに何百もの“見えない日々”があったのです。
あなたが「変わっていない」と感じている今この瞬間にも、
実は、問いの密度、違和感の質、内なる揺らぎの深さが、あなたを静かに進ませているかもしれません。
だからもし、「前に進めていない」と感じるときがあったら、
一度“問いの変化”を振り返ってみてください。
- ✔ 昔は考えなかったことを、いま悩んでいませんか?
- ✔ 「気にならなかったこと」が、気になるようになっていませんか?
- ✔ その違和感は、成長の“現在地”かもしれません
成長とは、「変わった」という実感ではなく、
“問いを抱えている自分に、まだ失望しきれない”ということなのかもしれません。
成長とは、“戻れない夜”を抱きしめること

あの夜のことは、今も思い出したくない。
失敗した日。逃げた日。誰にも見せられないまま、ただ時間が過ぎていった夜。
胸の奥にしまい込んで、鍵をかけたつもりだった。
けれど、ふとした瞬間に蘇る。
人の声、SNSの通知、ふと目にしたカレンダーの数字──どこかで繋がってしまっている。
「あの時こうしていれば」と思う気持ちを、もう何度味わったでしょう。
でも、成長とは「過去をなかったことにする力」ではなく、その夜を“語れるようになること”かもしれません。
心理学の臨床研究によれば、PTSDの軽減においてもっとも効果が高いのは、
“過去の記憶を「他者に語れる言葉」にすること”だといいます[4]。
つまり、人は「語り直し」を通じて、自分の中の痛みに位置を与えるのです。
その“位置”が定まった瞬間、過去は“呪い”ではなく、“構造”になります。
心理学者カール・ユングは言いました:
“One does not become enlightened by imagining figures of light, but by making the darkness conscious.”
「光を思い描くことで人は成長するのではない。
暗闇を意識化することによって、成長するのだ。」
誰もが語りたくない夜がある。
でも、その夜を見つめ直すことができたとき──
あなたはすでに、その夜よりも「強く」なっているということ。
あの日の自分を、否定する必要はありません。
そのときの自分なりに、最善を尽くしていたはずです。
そして何より、その記憶が今も残っているということは、
あなたが「まだ、その夜に意味を与えようとしている」証拠ではないでしょうか。
- ✔ あのとき、自分は何を守ろうとしていた?
- ✔ あの夜を“別の名前”で呼ぶなら、なんて言葉を選ぶ?
- ✔ いま語るとしたら、誰に向けて話したい?
──成長とは、成功の記録ではなく、
「もう二度と戻れない夜」を、静かに抱きしめられるようになることなのかもしれません。
よくある質問(FAQ)
変われないまま大人になるのが怖いです。
変化とは“気づきの積み重ね”です。昨日とまったく同じ景色に、今日は違和感を覚えたなら──あなたの中で、すでに“静かな進化”が始まっています。
周囲の成長ばかりが気になってしまいます。
人と比べてしまうのは自然なことです。でもそれは「自分も動きたい」「何かを変えたい」という意志がまだ残っている証拠。焦りは、あなたの中にまだ“火がある”というサインなのです。
頑張ってるのに、どうして自信が持てないのでしょう?
“頑張り”が「形」になるまでには、時間がかかることもあります。でも「問い」が深くなってきていませんか?問いの変化こそが、努力が続いている最前線なのです。
まとめ
- 問いが残る限り、成長は止まっていない
- 努力とは“変わろうとした揺らぎ”の総体である
- 過去を語れるようになったとき、人はすでに変わり終えている
このコラムをここまで読んでくださったあなたは、
おそらく「自分は成長できているのか?」と、何度も問い直してきた方だと思います。
誰にも見えない努力をしてきた人ほど、自分の成長に自信が持てない。
でも、問いがあるということは──
まだ終わっていない、ということ。
成長とは、確信ではなく「不確かさと共に進もうとする姿勢」そのものなのかもしれません。
立ち止まっていたように見えたその時間も、
じつはあなたの内側で、静かに“次の何か”が始まっていたのかもしれません。
だから、今すぐ答えが出なくても、大丈夫。
大切なのは、「変われたかどうか」ではなく──
“何度問いかけても、まだ手放せない自分”に気づくことかもしれません。
すべて“あなたの中で何かが動いた証”かもしれません。
またお会いしましょう。
脚注・参考文献
- PRタイムス|24卒・25卒に聞く!Z世代のキャリア観に関する意識調査 ─ SNS投稿に触れた際、若手の約65%が「自己成長への焦り・劣等感を感じた」と回答。
- ダイアモンドオンライン|元グーグル社員が教える、「リスキリングで成長する人」の共通の口癖とは? ─ 自己成長施策に取り組んでいる人の74%が「自己評価が上がらない」と回答。
- Carol S. Dweck – Stanford Graduate School of Education ─ 「成長マインドセット」理論。キャリアにおける成長マインドセットの重要性。
- 厚生労働省|PTSD(心的外傷後ストレス障害)の認知行動療法マニュアル ─ 記憶を“語り直す”ことが心理的変容をもたらす臨床研究が紹介されている。